今月のヘイルメリー

天邪鬼がキーワード

クリエイティブを生業にして、既に40年有余の歳月が経過している。その長きに渡るクリエイター人生では、雑誌の編集長やテレビ番組のプロデューサーやファッションブランドのクリエイティブディレクターなど様々な媒体及びポジションを経験している。結果を出さなければ次がない過酷な業種ゆえに、第一線で途切れることなく40年も仕事が入ってきたことに理由を見出せていない自分がいる。二流の人生を歩んできたことを自覚している筆者だが、継続を可能にしたこの背景だけは次世代クリエイターに伝えておくべき要項だと判断している。当該コラムでは、よって筆者がクリエイターとして生き延びてこられた理由をデコードしていく。その最大の要因は、性格にあると考えている。それがタイトルに冠した天邪鬼だ。元来、天邪鬼とは人の心を探って逆らう妖怪或いは小鬼のこと。そして現代では、人の期待や周囲の意見に対してわざと反対のことを言ったりするひねくれた性格や態度を指す。ある意味でネガティブなこの性格、幸運なことにクリエイティブづくりには適している。そもそも人とものの見方が違っているだけで、企画そのものに競争力が生まれるからだ。加えて、ものの見方が違えば必然的にアイデアや表現方法も違ってくる。クリエイティブづくりにおけるものの見方とはイメージやコンセプトの整理方法と同義で、その整理方法が独特でしかも説得力があればつくられるクリエイティブはオリジナル性があり且つパワーがあるものに仕上がる可能性が高い。『ヘイルメリーマガジン』愛読者のために、“ヴィンテージ”というアメカジの大ネタを例に取ろう。ヴィンテージを特集すれば、単純に雑誌は売れる。そこには、一定サイズのマーケットがあるからだ。筆者もヴィンテージ愛好者だったので、若い頃にはこれで部数を稼いだこともあった。気がつくと、しかしこのイージーな方法が業界に蔓延していた。しかもテキストやキャプションは、模倣や孫引きばかり。その時、「ここにはクリエイティブなどなく、裏付けに乏しい歴史や仕様の模倣本に過ぎない」ことに気づいたのである。当時筆者が「ヴィンテージミックス」を打ち出したり、「ヴィンテージ超え」を狙う本気のブランドに焦点を当てたのもそれが理由だ。同時に、独自のものづくりに徹するマイスターの仕事や人生をフィーチャーするようになった。『WAREHOUSE』塩谷兄弟、『STOP LIGHT』高山代表、『WOLF’S HEAD』幹田代表、『OIL CO.』鈴木代表。さらには筆者の「クリエイティブの師」であるテリー伊藤兄。彼らも、人一倍天邪鬼だったのだ。それはクリエイティブに細心を期するために、クリエイターが取り得る最強の防御策にもなっていた。時が流れた。ヴィンテージ好きだった我々は、それを超えるパワフルなオリジナルをつくりあげた。その過程には、濃淡があるクリエイターの生き様があった。彼らの生き様もまた、弊誌の看板クリエイティブになってくれたのである。